医療情報をSNSで探すときに気をつけたい3つの落とし穴

こんにちは、フリーランスでヘルスケア分野の記事を書いている真鍋さやかと申します。
総合病院の看護師として10年ほど働いたあと、家族の病気をきっかけにライターへ転身しました。

看護師時代、外来でよくこんなご相談を受けました。
「インスタで見たんですけど、これって本当ですか?」
「Xでこの治療法が話題になってたんですけど、やってみていいでしょうか?」

その気持ち、本当によく分かるんです。
スマホひとつで体験談や最新情報が手に入る時代ですから、検索よりもSNSで答えを探したくなるのは自然な流れだと思います。

ただ、現場にいた立場から正直にお伝えすると、SNSの医療情報には特有の落とし穴がいくつかあります。
今日はその中でも特に気をつけてほしい3つを、データと現場感覚の両方からまとめてみました。
読み終わったあと、SNSの医療情報との向き合い方が少しでも整理できれば嬉しいです。

SNSで医療情報を探す人が増えている背景

まず前提として、SNSで医療情報を探す人が増えているのは、利用者側の問題ではありません。
むしろ自然な流れだと思っています。

理由はシンプルで、体験談がリアルに感じられるからです。
公式サイトの「副作用にはこのようなものがあります」という説明よりも、「私は3日目から手のしびれが出ました」という具体的な投稿のほうが、感情的に届きやすい。
これは看護師の立場から見ても、よく分かります。

もうひとつは、検索エンジンへの不信感です。
広告だらけのアフィリエイトサイトに当たり続けると、「人のリアルな声を直接聞きたい」と思うのは当然のことです。

ただ、SNSは「リアル」を演出するのが上手な場所でもあります。
リアルに見えるからといって、そこに正しさが保証されているわけではありません。
ここからの3つの落とし穴は、まさにそのギャップから生まれるものです。

落とし穴1|「シェアされている=正しい」とは限らない

最初の落とし穴は、拡散されている情報を「正しい情報」と勘違いしてしまうことです。

タイムラインで何度も流れてくる、リポストが何千件もついている、フォロワーの多い人が紹介している。
こうした要素は信頼の根拠になりそうに見えますが、実は情報の正しさとはほとんど関係がありません。

偽情報のほうが拡散されやすいというデータ

総務省が公表した「令和5年版 情報通信白書」では、SNS上の偽・誤情報の拡散実態が詳細に報告されています。
2022年3月の調査で、約3割の人が偽情報に週1回以上接触したと回答し、SNS上での偽情報接触は5割を超えました。

そして注目したいのは、偽情報の遭遇ジャンルとして「生活・健康関連」が上位の26.0%に挙げられている点です。
詳しくは総務省「令和5年版 情報通信白書」(インターネット上での偽・誤情報の拡散等)をご覧いただきたいのですが、医療・健康情報はSNS上で偽情報が混ざりやすいジャンルだということが、公的データで示されているわけです。

なぜ「拡散されやすい情報」と「正しい情報」がズレるのか

これは情報そのものの性質によるものです。
SNSで拡散されやすい情報には、次のような共通点があります。

  • 衝撃的でキャッチーな見出しがついている
  • 「絶対」「危険」「常識」など断定的な表現が使われている
  • 一目で結論が分かるくらい短くまとめられている
  • 誰かの不安や怒りを刺激する内容が含まれている

一方で、正確な医療情報は、たいてい長くて地味です。
「個人差があります」「症状によって異なります」「医師に相談してください」といった注意書きが必ず入ります。
シェアしたくなる勢いがないんですね。

看護師時代、患者さんから「あの薬は危ないってネットで見ました」と相談されたことが何度もありました。
調べてみると、ごく稀な副作用を「絶対に起きる」と書き換えた投稿が拡散されているだけ、ということがほとんどでした。
シェア数の多さは、内容の正確さを保証してくれません。
むしろ、刺激的に脚色されている可能性すらあると思っておくくらいでちょうどいいと感じます。

落とし穴2|「医師アカウント」「専門家肩書き」だけで信用しない

2つ目は、発信者の肩書きだけで内容を信用してしまうことです。

「現役医師」「看護師歴◯年」「薬剤師」といったプロフィールを見ると、つい安心してしまいます。
私自身、看護師という肩書きで発信している立場なので、肩書きの安心感は痛いほど分かります。
ただ、この安心感には罠もあるんです。

専門家でも「自分の専門外」を語ることがある

医師にも内科、外科、精神科、皮膚科などさまざまな専門領域があります。
看護師も、急性期や慢性期、訪問看護、産科、精神科で日常的に扱う知識はまるで違います。

ところがSNSでは、自分の専門外について発信しているケースが珍しくありません。
たとえば消化器内科の医師が美容医療を語る、外科医がサプリメントを語る、といった具合です。
すべてが間違っているわけではありませんが、その発信者の専門領域なのかどうかは、必ず確認したいポイントです。

聖路加国際大学教授の中山和弘氏が運営する健康を決める力(ヘルスリテラシー)の解説サイトでは、ソーシャルメディア上の情報について「情報の正確さよりも他者の関心を引くことが優先されやすい」と指摘されています。
これは発信者の肩書きにかかわらず、SNSという場の特性として理解しておく必要があります。

肩書きを「裏取り」する具体的な手順

肩書きが本当かどうかを確かめる方法は、実はそれほど難しくありません。
私自身が普段やっているチェック方法を共有します。

  • 名前と所属医療機関で検索して、勤務先の公式サイトに名前があるか確認する
  • 該当する学会の会員一覧や認定医一覧に名前があるか調べる
  • 厚生労働省の医師等資格確認検索を使う
  • プロフィールに勤務先が書かれていない場合は、それ自体を一度疑う

すべて完璧にやる必要はありません。
ただ、「この人の発信を信じて行動を変える」と判断するときは、最低でもひとつは確認しておきたいところです。

落とし穴3|「広告」と「情報発信」の境目があいまい

3つ目は、医療系SNSの「広告」と「純粋な情報発信」の境目が、見た目では分かりにくくなっていることです。

「これを使ったら肌がきれいになりました」「このサプリを飲み始めてから体調がいいんです」。
こうした投稿が広告なのか、純粋な体験談なのか、ユーザー側からはほとんど判別がつきません。

ステマ規制が始まっている

2023年10月1日から、景品表示法のもとでステルスマーケティング(ステマ)規制が施行されています。
広告であることを隠して商品やサービスを宣伝する行為が、明確に違反となりました。

詳細は消費者庁「ステルスマーケティングは景品表示法違反です」で確認できます。
本来は「PR」「広告」「タイアップ」などの表記が必須になっているのですが、それでも消費者から見えにくい形で広告が紛れ込むケースは後を絶ちません。

2024年11月には、大手製薬メーカーがインフルエンサーを起用した自社サイトへの転載をめぐって、ステマ規制違反の措置命令を受けた事例も報じられました。
大企業ですらこうした問題を起こすことがあるという事実は、消費者として知っておいたほうがいい現実だと思います。

医療広告ガイドラインという背景知識

もうひとつ、知っておいてほしいのが医療広告ガイドラインの存在です。
医療機関のSNS投稿も、「誘引性」と「特定性」があれば広告とみなされ、規制対象になります。

たとえば、次のような表現は原則として禁止されています。

  • 「絶対に治る」「100%安全」といった絶対的な表現
  • 他院との比較で自院を優位に見せる表現
  • ビフォーアフター写真の安易な使用
  • 体験談を効果効能の根拠として使うこと

厚生労働省の医療広告ガイドラインに詳しくまとめられているので、興味があれば一度目を通してみてください。
逆にいうと、SNSで「100%」「絶対」「ほかとは違う」と強調している医療系投稿を見かけたら、その時点で何かがおかしいと判断する材料になります。

SNSで医療情報を見るときの判断軸

ここまで3つの落とし穴を見てきました。
では、SNSの医療情報をどう扱えばいいのか。
私が普段意識している判断軸を、3つの段階に分けてお伝えします。

段階1:気になった情報は必ず一次情報で裏を取る

SNSで気になる医療情報を見つけたら、まずは公的機関や学会の公式サイトに同じ内容があるか調べる癖をつけます。

  • 厚生労働省、消費者庁、国立健康・栄養研究所などの公的機関
  • 日本産科婦人科学会、日本医師会などの学会・業界団体
  • 医療機関の公式サイトに掲載されている解説ページ

たとえば不妊治療や生殖補助医療に関する情報なら、日本産科婦人科学会の倫理に関する見解一覧が国内の前提知識として参照できます。
SNSの投稿と公的情報を突き合わせて、整合が取れているかを必ず確かめる。
これだけで、偽情報に振り回されるリスクは大きく減ります。

段階2:個人の発信より「主体が見える発信」を優先する

匿名インフルエンサーの発信よりも、運営主体が公開されている発信のほうが、内容の責任の所在がはっきりしています。
具体的には、企業の公式アカウントや、医療機関の公式アカウント、学会の公式アカウントなどです。

もちろん「公式だから絶対に正しい」とは言えません。
公式アカウントの中には事業の広告色が強いものもあります。
ただ、誰が責任を持って発信しているのかが明確であることは、情報の確からしさを判断する大きな手がかりになります。

医療系の企業公式アカウントを実際に覗いてみると、各社の発信スタイルの違いがよく見えてきます。
たとえば、生殖補助医療の領域で卵子提供や代理出産のサポートを行うエージェントとして、モンドメディカルの公式Instagramと利用者の評判の手がかりを眺めてみると、サービス紹介と利用者向けの情報発信、海外の提携クリニック情報などが混ざった構成で運用されているのが分かります。
こうした実例に触れることで、「企業公式アカウントの発信は、こういうトーンで、こういう情報が出てくるものなんだな」という肌感覚がつかめてきます。
発信者の素性と発信内容を一緒に確認する習慣が身につくと、SNS全体の医療情報に対する見る目も自然と養われていきます。

段階3:SNS情報だけで意思決定を完結させない

最後に、もっとも大事な原則です。
SNSの医療情報を、最終的な意思決定の根拠にしないこと。

SNSは「気づきのきっかけ」を得る場所としては優秀です。
ただ、自分や家族の体に関わる判断は、必ず以下を組み合わせて行います。

  • 主治医や薬剤師など、自分の状態を知っている専門家への直接の相談
  • 公的機関・学会が公開している一次情報
  • 信頼できる医療メディアの解説記事

この3点をSNSの情報と並べて、ようやく「判断材料がそろう」と考えてください。
SNSはあくまでスタート地点であって、ゴールではありません。

まとめ

ここまで、医療情報をSNSで探すときに気をつけたい3つの落とし穴と、判断軸を整理してきました。
要点を振り返ります。

  • 落とし穴1:シェアされている情報が正しいとは限らない。偽情報のほうが拡散されやすいというデータがある
  • 落とし穴2:医師や看護師の肩書きだけで信用しない。専門外の発信や、肩書き自体が正しくないケースもある
  • 落とし穴3:広告と純粋な情報発信の境目があいまい。ステマ規制や医療広告ガイドラインを背景知識として持っておく

そして判断軸は3段階。
一次情報で裏を取り、主体が見える発信を優先し、SNSだけで意思決定を完結させない。
この3段階を意識するだけで、SNSとの距離感はずいぶん健全なものになると思います。

SNSは、医療情報を探す手段として完全に悪者ではありません。
むしろ使い方を覚えれば、患者さんや家族にとって心強い情報源になり得ます。
ただし、「使いこなす側」に立つためには、ちょっとした知識と習慣が必要です。
今日お伝えした内容が、その一歩になれば嬉しいです。

最終更新日 2026年6月18日 by carret